「リピート(乾くるみ)」のどくしょかんそうぶん

あまり人からおすすめとして本を借りることが好きでないぼくですが、「リピート (文春文庫)」も例によって断れずに借りた本でした。
「でも、いつ読むかわからないよ?」「いいからいいから」ってな感じで。

しかし、6月末に引っ越すこととなったぼくは、その前に読んで返してしまおうと思い、一気に読んだのでした。

やはり、読むまでは億劫ですが、読みだしたら面白く、遅いながらも一気に読んでしまいました。結論から言って面白いです「リピート」。

借りた時点でブックカバーがかかっていたので、なんの前情報もなく読めたのも僕にとってはよかったと思います。

レビューだとか書評だとかというものを書いてみようと思ったのですが、ちょっとハードルが高そうなので、読書感想文という形で。それらがどういったものかも把握していないうえに読書感想文も苦手だったんですけどね。

※なんの前情報もなく読みたい方は以下を読まずに「リピート」を読んでください。

あらすじ(核心には触れません)

大学四年生の毛利圭介のもとに突然見知らぬ男風間から電話がかかってくる。
地震を予言し、時間を繰り返しているから未来も把握しているという。
その繰り返し「リピート」に参加しないかという誘いが、毛利を含め無作為に集められたという男女9人に持ち掛けられる。戻るのは10か月前。意識のみが戻るという。
事前に準備していけば、競馬で大儲けもできるし、大学への合格もできる。
毛利は半信半疑ながら過去の新聞を読むなどの準備し、風間を含めた10人で過去に戻ることになる。
そこで次々とリピーター仲間たちが死んでいく。
なぜ死んでいくのか。誰に、どうして殺されることとなったのか。
残されたメンバーで謎を解いていくことになるが……。

感想

実際に過去に戻るまでが長く、前情報の無いぼくには、「あれ?まさか結局このままもどらないって話だったりする!?」とすら思えました。
でも突然、地震をぴたりと予言され過去に戻らないかと言われても半信半疑ですよね。
なのでその辺の描写がリアルで、その誘いに翻弄されている状態だけでも十分話になるなと思いました。
まあもちろんその後、過去に戻るんですけどね。

タイムマシンに乗って、過去の自分に会わないように、歴史を変えないように的なSFではなく、過去に意識だけが戻るという展開はあるいはよくある設定なのかもしれませんが、競馬で大穴を当てるとよくないとか、リピートのことを多言してはいけない理由の部分とか、リピート前の自分と大きく変わる行動をとってしまうと、リピート前の環境とのずれが大きくなってしまい、結果的に自分が持ってきた未来の記憶が役に立たなくなってしまうから、できるだけ同じように行動した方がよいと注意を受けるところなんかもなるほどと思いました。

ぼくも昔なんとなく、ふと起きたら記憶をそのままに小学生に戻っていましたみたいな妄想をよくしていたのですが、どんな行動をするか、どんなことが起こりうるかといったことはあまり深く考えられていませんでしたね。
みんなのことをやはり子どもだなと思っていたり、授業をずっと寝て過ごしていてもテストはずっと100点だったりして、言動も妙に大人びている。
いや、本当は大人であるぼくも先生が怒鳴るのは怖いから、寝て過ごすなんてできないかな、とか。
大人を論破してしまうような口の回る子どもでも、「何も経験していないくせに生意気な奴だ」と一蹴されてしまうのかなと思ったり。
日記の宿題で先生に未来を知っていることを打ち明ける感じとか、近い未来ではなく遠い未来を予言して、その詳細さに先生も信じる方向に傾く感じとか、なんかそんな妄想でした。
ぼくが想定していたのは、過去に戻れることを知らずに準備なしにいきなり戻るって感じだったので、未来を知っている優位性だとか選民意識だとかでエッヘンってなりたいだけのかわいい妄想でしたけどね。

「リピート」の場合は戻るは時間は10か月前で、あらかじめ準備もできるので、それは競馬やら株やらやりますよね。
ぼくだったら何をするだろうと考えたら、やっぱり一生暮らす分のお金を稼いでしまうってことは考えそうです。

この作品を読んでいて、昔見た「君といた未来のために」という堂本剛主演のドラマを連想しましたが、その作品でも繰り返し1回目はお金儲けしまくりますよね、やっぱり。そして社会的地位や名誉をも得ます。まあすぐに没落してしまいますが。

ちなみにやはり記憶だけ過去の戻る系の話として、両作品ともケン・グリムウッドという方の「リプレイ (新潮文庫)」という小説が下敷きになっているようですね。
というより「リピート」には作中で登場人物により「リプレイ」について触れられていたりしますが。

また僕の妄想の話ですが、もし過去に戻ったら、進学先・就職先など所属するコミュニティが変わってしまったり、所属するタイミングが変わってしまったりとかで、偶然ばったり出会った人なんかそりゃもうそうですが、大切な人に知り合うことができなくなってしまうというぞっとする展開も考えます。

10か月前くらいだったら、行動が変わってしまってもそこまでリピート前の人生で出会うべき人と出会えなくなってしまったりとかの影響が、少なそうです。
絶妙な設定です。
それもそのはず、前情報を全く得ずに、作者である乾くるみさんのことも知らずに読んだので、SFに始終すると思ったのですが、何やら物騒な話になっていくじゃないですか。
まさか死人が出るなんて、バタバタと。
ええぇー!そんな話だったの!?的な。

このミステリー展開には10か月前っていう設定がちょうどよかったんですかね。
そう、リピーターがバタバタ死んで、その犯人を、なぜ死んでいくのかを、殺されるのかを解明していくのですが、なんといってもリピーターの一人天童のかっこよさですよね。

冷静で頭もきれて、危険な香りもするという、魅力的なキャラクターです。
主人公も天童が見込むほどの聡さがあるんですが、より人間臭い感じですね。ここでもなかなかリアルです。

そして先の読めない展開はやはりこの作品の魅力ですよね。
ミステリー・推理小説のめざすところではあると思うんですけど、舞台設定から何から全体を通して、よく考えられ練られているなと感動します。

上述の「君といた未来のために〜I’ll be back〜」はもちろんテレビドラマであるという特性もあるのかもしれませんが、今見るとツッコミどころ満載な展開だったりすると思うのですが、あまりそういった詰めの甘さ的なものは感じられませんでした。

タイムリープものではバタフライ効果という、すこしのずれが大きなずれになっていってしまい歴史が変わっていってしまうということが問題としてあると思うのですが、この辺にも触れつつも、変えられない運命的な点があります。
涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)」でいうところの規定事項、作中では「運命の輪」という表現だったでしょうか。
そのへんも無理がない感じがしました。

ぼくは「シュタインズ・ゲート」とかも好きなのですが、シュタインズ・ゲートの場合は別の形でも出会うし、死ぬときはタイミング同じくして死ぬしで、この「運命の輪」なところが強烈で、少しぼくの中でのツッコミどころであったりするので。

振り返ってみると、あまり読まないとは言え、ぼくはこういった時間移動系のSFやミステリーは潜在的にはすごく好きなんだと再認識しました。

乾くるみさんのほかの作品も含めていろんな作品を今後も読みたいと思います。
実は乾くるみさんの「スリープ (ハルキ文庫)」という作品をその後読みました。
それについては追って書けたらと思います。

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